平成29年度 税制改正大綱

税制

平成28年12月8日に平成29年度税制改正大綱が与党から発表されました。
税制改正大綱とは、通常、年明けから行われる国会で審議が行われた後、
3月後半に可決される税制改正のもととなるものです。
従いまして、今回は平成29年度の税制改正大綱に基づいた記載を行いますが、
実際に可決される法案とは中身が異なる可能性があることをご理解ください。
配偶者控除、配偶者特別控除の見直し
従前の配偶者控除とは、合計所得金額38万円(給与収入103万円)以下の配偶者がいる場合に、
納税者が38万円の所得控除を受けることが出来る制度です。
従前の配偶者特別控除とは、合計所得金額が38万円超76万円未満(給与収入103万円超141万円未満)の
配偶者がいる場合に、その合計所得金額に応じて納税者が一定の所得控除を受けることができる制度です。

平成29年度の税制改正大綱では、
まず配偶者特別控除を受けられる合計所得金額の上限が123万円(給与収入約201万円)まで拡大され、
かつ、合計所得金額85万円(給与収入150万円)までは、配偶者控除と同様に、
納税者が38万円の所得控除が出来ることとされました。
つまり、実質的な配偶者控除の適用範囲として、配偶者の給与収入が103万円から201万円に拡大されます。

一方で、納税者の所得に制限がかけられます。
これまでも配偶者特別控除については、納税者の所得が1,000万円超の場合には適用不可でしたが、
平成29年度の税制改正大綱では、配偶者控除も同様に1,000万円超は適用不可となります。
また、900万円超950万円以下及び950万円超1,000万円以下の場合には控除額が減額されます。

この改正は平成30年分から適用開始となります。

積立NISAの創設
これまでのNISAは1年間の枠が120万円であり、非課税期間が5年となっていました。

平成29年度の税制改正大綱で新たに創設される積立NISAは、
1年間の枠が40万円であり、非課税期間が20年です。
ただし、この積立NISAは投資信託等に限定されるものであること、
また、通常のNISAとのいずれかの選択適用となります。
頻繁な株式投資を行わないが、将来を見据えた資産運用を行いたいと思い、
その際に投資信託を活用される場合に使える制度となっています。

この改正は平成30年1月1日から適用開始となります。

中小企業投資促進税制の拡充・改定
これまでの中小企業投資促進税制の上乗せ措置について、
平成29年度の税制改正大綱では、建物附属設備と器具備品を対象に加えて、
中小企業経営強化税制として改組されます。

要件としては、経営力向上計画の認定を受けた青色申告書を提出する中小企業者等が、
平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に、一定要件を満たす資産を取得し、
事業の用に供した場合に適用となります。
要件を満たすと、取得価額の即時償却(100%償却)か取得価額の7%の税額控除の
いずれかを選択することが出来ます。

非上場株式等の相続税等の猶予制度の拡充
平成29年度の税制改正大綱では、
相続時精算課税制度を適用している贈与を、
贈与税の納税猶予制度の適用対象に加えることとなります。
これにより、納税猶予制度と相続時精算課税制度の併用が可能となります。

この改正は平成29年4月1日以後の贈与から適用開始となります。

相続財産の範囲の見直し
日本国籍があるが国内に住所がない相続人等の相続財産の範囲で、
国外財産を課税対象外とする要件について、平成29年度の税制改正大綱では、
被相続人等及び相続人等が、相続開始前10年以内に国内に住所がないこととするように
改正されました。
これまでは、5年以内だったので、単純に課税される範囲が増えたこととなります。

この改正は平成29年4月1日以後の相続、遺贈、贈与から適用開始となります。

高層マンションの固定資産税等の見直し
これまで、同じマンションで広さが同一であれば、
高層階と低層階で同額の固定資産税等が発生していました。
しかし、高層階の方が資産価値が高いことを考慮して、
平成29年度の税制改正大綱では、高層階と低層階で課税額に差をつける改正がされます。

この改正は、平成30年度から新たに課税される建物について適用開始となりますが、
平成29年4月1日前に売買契約が締結された住戸がある場合には適用対象外となります。

所得拡大促進税制の拡充
中小企業者等については、これまでは基準年度と比較して増加した給与額の
10%が税額控除されていました。
平成29年度の税制改正大綱では、上記内容に加えて、
前年度と比較して増加した給与額の12%の税額控除が追加されました。
すなわち、最大で22%分の控除を受けることが可能となり、場合によっては、
これまでの2倍以上の控除を受けることが可能となります。